セックスに

あまり多くのものを感じなくなった。10代のころは、それさえあれば何もいらないと思うほど圧倒的な幸福感を、セックスから与えられていた。幸福感だけでなく、吐き気を催すほどの充足感。悲鳴をあげるほどの快楽。包みこまれるような穏やかな気持ち。すべて引き裂いてしまいたくなる凶暴な気持ち。羊水の中をたゆたうような安心感。巨大な渦に飲み込まれていくような恐怖。全部を同時に感じて、どうしていいかわからずに、涙を流した。数えきれないはじめての感情をセックスから得ては、セックスで世界とつながっていると思った。セックスを知ったことは革命だった。
あのころの気持ちにかえりたい。今のあたしにとってセックスは大したことではなくなってしまった。汚れるってこういうことなのかな。