20150430

 遠すぎない仕事先には自転車を使うようにしてからさわやかな気持ち穏やかな気持ちがわたしに戻った気がしていた。なのに昨日また電車に乗ると前に立つ男女3人組のどうということもない会話が耳についてしようがなくいらいらして頭のなかに物騒なせりふが飛びかう(『だまれブス』『殺すぞ』)。元どおりだ。電車に乗るとこのように一度ごと3、4人を憎まないで帰宅できたためしがない。それで今日はまた自転車に乗ることにした。ペダルをこいで風をあびるとやはり自分を取り戻していく感覚がある。しかしわたしが今までに失ってきたわたしの総量は小一時間ペダルをこぐ程度のことで取り返せるものなんだろうか。だいいち取り返すだけの自分というのがここにあったのか謎だし。

 自転車で通りかかった目白のちいさな本屋さんで一冊の本を買う。その本の薄いけれどていねいなつくりに触れて思いだす。斜線ちゃんの文章ののったフリーペーパーがセブンイレブンネットプリントで出力できるのだった。だが詳細をツイッターに見にいくとすでに配布は終了していた。告知されてから何度もセブンいこう明日いこうと考えていたのにその都度忘れてこのざまだ。いつも大切なことから順に忘れてしまう。だって大切なことほど生活からは遠いんだもの。生きていくためのたくさんのこと。日々増えていくように思えること。食事を用意し食べて湯を浴び必要な長さの睡眠をとる。仕事のしたくと仕事、移動。それだけでたくさんになってさまざまの大切をあとまわしにして忘れてしまう。生きていくのに必須のことだけでたくさんにならない人びとにどんな秘訣があるのかわたしにはわからない。わたしはいつも必要に追われていっぱいいっぱいだ。きっとよくないことにちがいない。あした生きるためにまるで必要のないものごとをもっと身のまわりに置いていかなくてはならないと切実におもう。部屋をかざる花や緑。じゃまな置物。余分なデザート。遠いくにの物語。すべての音楽。