でもいい兆候だとおもっている

セックスのやり方はわかっても、
やさしくされ方はわからない。
ファーストフードみたいなセックスしかこなしていないと、
スローセックスは拷問のようにはずかしい。
いいからいっそひと思いに挿れてしまってよ、とおもうけど、
ていねいな愛撫は止まることなく、
狂いそうなあたしは泣きながら、
その時間を感じる。


女性器でなく、女性としての自分が大事にされるなんて、ひとりの人間として扱われるなんて、こわい。


抱きまくらでいたほうが楽なんだ。
「ソレ」さえしてれば可愛がってもらえるし、
捨てられてもそんなもん、っておもえるから。
だけど人間になってしまった、彼の前で、あたしは。


この肉体なんか、性器のアクセサリーでしかなかった。
「はずかしい」なんて、お決まりの台詞だとおもってた。
でもいまは死ぬほど「はずかしい」、見ないで。見ないで。
あたしを見ないで。


セックス自体が、いまはすこしこわい。
こんな自分がいるなんておどろきだ。