ケロイド

 16日よる、すのう氏がやわらかいお肉をごちそうしてくれた。しゃぶしゃぶ。すのう氏と鍋をつつくのははじめてなのだけれど、たぶんそうだろうなあと見こんでいたとおりにすのう氏はお鍋大臣だったので、あたしはもぐもぐに専念できていい気なものだった。「見たことのないきのこ」と「隙のないごまだれ」に大まんぞく。
 お肉を泳がせながらシリアスな話をした。「考えたんだけどさ。たとえばxiangliが大火事に遭って、xiangliだって判別できないくらい顔に火傷を負ったとして、それでも愛していけるかっていわれたら、正直『うん』とは即答できないかもしれない。」すのう氏が言った。互いのどこが好きか、という話をしていたときだった。うん。あたしもそれを考えていたんだ。いったいどこからどこまでがその人なのだろうね。すのう氏が別人の顔に整形したり、全身の皮ふをはがれても、おなじたましいが宿っているからすのう氏?いまお箸でつまんでいる薄切り肉みたいになったなら、あたしはあたしでなくなるの?なくなるならば、いつなくなるの。どこまで焼いて、刻んで、潰したら。その境界線は。よくわからなくなってあたしは、「お肉おいしいね。」としか言えなかった。