さん

10さい上のマッチョなおにーさんと、高3の初夏に知りあった。はじめて会った日から、私はおにーさんを大すきになった。豪快にしゃべって、豪快にわらって、豪快におかねをつかうおにーさんは、いっしょにいてすごくきもちがよかった。会ってるときはいやなことをぜんぶ忘れた。会ってから1週間は晴ればれとしたきもちですごすことができた。私のなかにおにーさんが住んでるみたいで、会えなくてもさみしくなかった。さみしさのつきまとわない恋なんてはじめてだった。


おにーさんは私のあこがれで、私にはおにーさんに勝てることなんてひとつもなかった(バストでさえも)。完敗だった。だから、このひと相手にかけひきなんてしてもむだだとおもった。「はたちゃんおれのことすきでしょ?」といわれたときも、わらって、うん。とすなおにこたえてしまった。そうしたら「こまりましたねー」とおにーさんもわらった。わらって抱きしめてくれた。


いちどだけ、おにーさんが「つきあう?」といってくれたことがあった。私はうれしくてしかたなかったけど、つきあうというかたちはなにかすごい違和感があって、「ううん」といってしまった。なんというか、おそれおおかった?のかもしれない。それでつきあわなかったんだけど、それからもよく会った。いっしょに映画をみたり、バイクのうしろに乗せてもらったり、卑わいなポスターが貼ってあるおにーさんの部屋でごろごろしたりした。18の私のいちばんのおもいで。いまでもにやにやしながらおもいだす。