なっとく

あたしはどうしてこんなに生気がないのか。ちゃんと就職する気もあんまりなくて、バイトでいいやって思ってるし、これといってやりたいこともない・なりたい自分もない・しがみつきたい人もいない。生きてない・死んでないだけの眼をして、いつも鏡に映ってる。若いんだからもっとがむしゃらになればいいのに、どうしてなんだろうってふと、その明るくも暗くもない眼をのぞきこんで考えてみた。答えはすぐに出た。あたしが欲しかったものなんて、全部この部屋にあるんだ。漫画も本もパソコンも揃ってるし、お気に入りのDVDをいつでも観れる、うたも聴ける、気が向いたときに料理もできる、なんでも好き放題にできる、ピンクと白だらけの空間。好きなものだけ集めたこの部屋は、六畳間のあたしの城だ。ずっと夢見てた自分だけの場所。はじめて自分にしっくりきた住処。ここで生きていくだけのお金が稼げている今、あたしには望むものなんて残らないんだ。




手に入ってしまうってある意味こわい。