彼氏と

別れることになった。今日彼がこの部屋を出ていく。
2ヶ月前に彼がこの部屋に持ちこんだ、ダンボールにしてわずか3つぶんほどの生活品は今、部屋のひとすみにちぢこまって、静かに集荷を待つのみだ。あたしはこれから学校に行って、戻ってくるときにはこれらの荷物はなくなっていて、彼もいない。
あたしは目を閉じて空想する。鍵をあけて、午後7時の薄暗い部屋に入ると、ずいぶんすっきりした部屋の真ん中で、彼と買いにいった白い冷蔵庫が、控えめな稼働音を発している。静かな部屋にはその音が大きく響く。
そのときあたしはどう思うのか、正直いってわからない。大丈夫な気はしている。むしろ開放感すらあるかもしれないと思う。でも予想に反して、全然平気じゃないかもしれないとも思う。身も世もなく、むき出しになった床に座り込んで泣くのかもしれない。自分がどうなってしまうかわからない。
まあ、でも、それでいっか、と思う。ドアを開けてから感じればいいんだ、それは。
ドアをあける時は、だまっていても泣いていても、必ずやってくるんだから。