3月9日

・流れる季節の真ん中で、ふと日の長さを感じる3月9日ですね。東京は冷たい雨が降っていて、溢れだす光の粒が少しずつ朝を暖めませんでしたが、それでも春のはずの、3月9日です。わたしなんてーのは、瞳を閉じればだれかが・まぶたのうらにいるわけでもなくて、気づいたことはやっぱり1人だってことだったりしますが、それでも「どれほどーつよーくなーれたーでしょーう!」って声を大にして歌ってみます。

・2月、告白されました。あいては30歳すぎの会社員で、ときどきふたりで映画をみたり、お酒をのみにいったりする仲でしたが、そういう意味でしたってもらっているとはまったく思いもよらないわたしは、とつぜん彼におそわれて、とてもびっくりしたのでした。おそわれて、といってもわたしはことばばかりの抵抗もろくにしめさなかったので、ああいうのは和姦というのかもしれません。わたしにおおいかぶさりながら、わたしの名前をよぶ、声がとても悲痛だったので、こちらが泣きそうになり、なにもいえませんでした。「わかったから、そんなに悲しい声をださないで。」そういって背中に手をまわしたい気持ちに強くかられましたが、「わかったから」って何がわかっているわけでもないし、手をのばしてしまえば、その悲痛な声をもうきかなくてよかったかもしれませんが、そういう一時しのぎはもっともざんこくな憎むべき行為だとおもい、やめました。けっきょくわたしは、微動だにせずそこで彼の声をききつづけることしかできませんでした。行為のおわったあとで、「どうして」つぶやいてしまうと、彼はずしん、とこころに沈むようないいかたで、「ずっと好きだったんだ。」といいました。それは行為のさいちゅうに、どうしようもなく、わかってしまっていたことでした。わたしのこたえはきまっています。「つきあうことはできない」、です。ぜったいに使いたくないことばがありました。それは「ごめんなさい」です。ドラマや漫画などの告白シーンを観るにつけ、断りかたが「ごめん」だなんて失礼だ、ひどい、なんて無神経なの、もしわたしに機会があれば決してそのことばは使うまい、とこころに決めていたのです。ところが、そのとき、「ごめんなさい」とまっ先にいいたくなりました。「ごめんなさい」を避けるとなると、あとにはざんこくなことばしか残らなかったのです。あやまって一瞬で楽になってしまいたい、と何度もおもいながら、わたしはざんこくなせりふをすべていい終わりました。彼がのちに使ったことばを引用すれば、こっぴどくふりました。彼はその夜、もうなにもしゃべりませんでした。わたしはふるえる手で、逃げるように、携帯をいじりはじめました。/それからひと月ちかく経ったいま、まだ彼は、わたしのことを好きだといってくれています。わたししかないと。「この気持ちはうたがえない」、そういいました。わたしも、彼が気になりはじめています。あたまのなかでずんずんと、彼のばしょが大きくなっていくのを感じます。強い感情をぶつけられて、情がうつっただけといわれれば、そうかもしれません。そうでないかもしれません。【ふうちゃん】

・2月、同い年にみえない大人びた男の子に出会いました。けいえい者をめざしているのだといいます。肌は健康そうにあさぐろく焼けていて、眼はいきいきとひかっています。ひと目みてわたしは、彼が好きだとおもいました。わたしにとって、ひとを好きになるのはかようにもかんたんなことなのです。セックスをしました。3回したあとで、彼にこいびとがいることがわかりました。想定内ではありましたが、がっかりもしました。がっかりのしかたが浅いことに、もっとがっかりしました。わたしにも彼氏がいることは、いいません。こういうときは、かわいそうながわに立っているほうがらくなのです。打算まみれ。彼にはまたちかぢか会うとおもいます。会えるといいです。【のりピー

・2月、クラブで風貌のかわいい同い年の男の子と出会いました。まじめそうなひとです。きょう飲みにいく約束をしています。どんな話をしようか、とてもたのしみです。【ひかりん】

・3月、30歳のせんぱいがひとり暮らしをはじめた部屋にたずねていきました。シンプルですてきなお部屋でした。お酒をのんで、ベッドにいれてもらうと、せんぱいは予定調和のようにわたしのシャツの中をまさぐりはじめました。天井をながめながら、そうだ、わたしは女なのだなあ、とよっぱらいのあたまで考えました。おもむろにベッドから這いだし、わたしはラグの上でねむりました。明けがたに気がつくと、薄手のふとんがからだにかぶせられていました。とたんにうれしくなり、くすくすと笑いました。【えんちゃん】

・3月、ツイッターでやりとりをするだけで、ほくほくしてしまう相手がいます。その声を、そのかおを、思いうかべるだけで顔がにへらと動きます。袖だけでもいいから触れたいです。でもどこかでおもっているのは、「このねがいがかないませんように」ということです。【かえでさん】

・3月9日、冷たい雨は雪にかわりました。書きたいことを書いたら、自分のいちばん気に障る文章になりました。どれ程、強くなれるでしょう。